The Chicken, the Fish and the King Crab

2年に1度リヨンで行なわれる料理コンクール、Bocuse d'Orに参加するスペインのシェフのドキュメンタリー。コンクールの何ヶ月も前から何度も練習と試食会を重ね、休みも週末も返上して、課題の料理を作り続ける日々。一度は決まったアイディアを全部ひっくり返しまた最初から料理を練り直し、コンクールの5時間半に向けてすべてを注ぎ込んで追い込んでいく。うーん、おもしろかったです。会社帰りに見るから絶対お腹が空くなーと思って、映画の前に軽く食べていったんだけど、ずっと画面にあふれる緊迫感だからかほとんど最後までお腹は空かなかった。
お腹が空かなかったもうひとつの理由には、画面に出てくる料理が食べるための「料理」というより、work of artとしての料理だったからだな、とも思う。確かに美しくて洗練されていてアイディアにあふれていて、そして最高の食材を使うんだから味もきっとおいしいに決まっている。でもそれは「コンクールで勝つための料理」であり、「自分や誰かが食べるために作られる料理」じゃない。どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、違う料理なんだなと思う。こうやって技術やクリエイティビティを競うことも料理の世界を広げることにつながるわけだから、全然ありだと思います。実際見ていて本当に興味深くて楽しかった。
スペインのシェフは9位。1位はフランス。見た目は確かにフランスが圧倒的に美しかった。スペインのシェフが試作し、酷評を受け、何度もチャレンジするのをずっと最初から見ているので「スペインがんばれー」と思いながら見ていたけど。それでも9位はスペインにとっては上位入賞なんだけどね。
ラストの2−3分くらい前に画面いっぱいにパエリア鍋が出てきます。鶏肉やパプリカとお米がおいしそうな音をたててソテーされてて、その時はじめて「あーおいしそう・・・お腹空いたー」と思いました。パエリアを作っているのはシェフのお母さん。そのお母さんの横に立って、時々鍋をのぞき込みながらインタビューに答えるシェフ。おいしそうだったな、パエリア。このママのパエリアが最後のシーンっていうのもよかった。
原題*1のThe Chicken, the Fish and the King Crabというのはコンクールの課題食材の3つ。ブレス産のチキン、ノルウェー産のオヒョウとタラバガニのことです。*2

*1:日本語タイトルは「ファイティング・シェフ 美食オリンピックへの道」

*2:課題食材は毎回変わる。