夏時間の庭

画家だった大叔父のアトリエにひとりで住む母が亡くなって、3人の子供たちが遺産として残されたその家と家に飾られていた価値のある絵と調度品をどうするか、というのがストーリー。3人のうち長男こそフランスに住んでいるけれど、長女である妹はニューヨークで仕事をしていてアメリカ人と結婚する予定だし、弟は仕事の関係で中国に住んでいて、いずれ北京に家を買って中国に落ち着く予定でいる。パリから一時間ほどのイル・ド・フランス地方にあるこのアトリエに3人が来られるのは年に多くても数回。残すことにすれば莫大な相続税を払わなくてはならない。現実的に考えれば残すことは不可能、でも売ってしまうのも即決できない。
ストーリーとしてわかりやすい起承転結があるわけじゃなく、3人のそれぞれの様子が交互に一応写るけど、とにかく3人がそれぞれの配偶者も含めて「話して」いるシーンがほとんど。それはもちろんこの家をどうするか、家や調度品にまつわるこどもの頃の思い出、母の思惑、現在のそれぞれの事情、それが脈絡なく話される。ドキュメンタリーを見ているかのような気が途中でしてくるほど。フランス映画っぽいなー。
でも確かに実際は、脈絡なく行きつ戻りつ現在は進んでいくわけで、特にひとの気持ちは起承転結があるわけじゃないから、リアルと言えばとてもリアル。
この映画の中に出てくる美術品は、オルセー美術館が協力なのですべて本物だそう。見ている間はあんまり意識しなかったけど。それよりも夏の光にきらきらと輝く光あふれる庭の様子がとてもよかった。生い茂る緑とその庭で食事をする様子をじっと見てしまった。
話は全然違うけど「なんかHoward's Endを思い出すなー」と思いながら見てました。西欧の人の「家」に対する思い入れの深さ。やっぱり地震や台風で壊れる国の「家」に対する思い入れとは別種のものだという気がする。そこに住むためのものだけではなく、自分の分身のように思っているのかなと思うほど濃くて深いという印象を受ける。