帝国ホテル厨房物語

帝国ホテルと言えば日本を代表するホテルですが、あたしの印象は「気取りのない感じのいいホテル」です。
名実ともに一流ホテルだけど、あたしが帝国ホテルって一流だなと思うのは、威圧的なところがなく過不足なくリラックスできるホテル、という印象を自分が泊まった時に受けたので。
著者の村上信夫さんは、神田で生まれ育ち、浅草のブラジルコーヒーに入社してのちに帝国ホテルに入社、間に戦争をはさんで、帝国ホテルにもどり、ずっと料理人として生きた方です。
この本は日経の「私の履歴書」に加筆されたもの。
村上信夫さんといえば、こどもの頃に「きょうの料理」で見た記憶がかすかにあるような・・・。
白いコックコートを着た、ふとっちょのチャーミングなおじさん。
でも「おいしいものをつくるひと」だというのは、こどものあたしにも刻み込まれていて、料理に興味を持って食いしんぼうになるきっかけになった人のひとりでもあります。
父が生の魚が食べられない人なので、子供の頃の外食は洋食がほとんどでホテルのメインダイニングでフランス料理ということがわりに多かったのですが(なので家族旅行とかで温泉に行ったり、純日本風の旅館に泊まるということもまったくなかったな)こどもなので出てくるものを何も考えずに食べていたけど、今思うとこれも確実に食いしんぼうのきっかけのひとつ。*1
今思いだしても華やかな飾り付けた料理はまったくなくて、金色の縁の白い大きなディナー皿に盛られて出てくる料理はフレンチだけど、ベーシックなものってイメージだったなあ。こどもの頃のホテルの洋食って。*2
今と違って個人がオーナーのフレンチのレストランはあまりないから、昔はフランス料理を食べるときはホテルのダイニングだったんだなあ、と自分の体験を思いだしたのもこの本を読んで思ったこと。
昔はフランスに修行に行けるとしたら大手のホテルのコックじゃなければ(つまりスポンサーがいなければ)むずかしかった、という時代背景もあるんだろうな。
後に帝国ホテルに泊まったとき「ああ、ここが村上料理長の・・・」とちゃんと思いました。(単なるミーハー)
朝食をルームサービスでとった時「いいな」と思ったのは、ちゃんと真っ白なプレスのきいたテーブルクロスを掛けたテーブルが部屋の中で支度されて、テーブルの上にばらの花の一輪ざしが乗っていたこと。
もちろんコーヒーも銀のポットにたっぷりで料理も熱々だった。
あの朝ごはんは間違いなく今までの朝ごはんベスト10に入るなあ。

*1:何にもわかんないこどもの頃に食べたものなのに、確実に今の自分が「よしとするもの」に影響してると思うもの。三つ子の魂百まで、ですね

*2:日曜日のお昼に行くと、ダイニングルームの一角でアルゼンチンタンゴの生演奏が食事の間じゅう行なわれてたりしてたんだ。今思いだした。のんびりしてたなあ、今思うと。