Ladies in Lavender

なんとも切ない話だった。
邦題はラベンダーの咲く庭でを見てきました。
ストーリーは一時話題になった「ピアノマン」と似ている、という映画。
あたしは主人公の老姉妹2人、ジュディ・デンチマギー・スミスのファンなので、この映画は是非見たいと思っていたのですが。
舞台は1936年のコーンウォール。イギリスの南西部の避寒地*1。多分ペンザンスの郊外の海辺。
そこに女中と静かに暮らしている姉妹が、嵐のあとの海辺で倒れていた外国人の若い男性を助けるところからストーリーは始まります。
この若い男性は片言のドイツ語しかできず、英語はまったくわからないポーランド人。
アメリカへ向かう途中の船が難破し、コーンウォールの海辺に流れ着いたらしい。
足を骨折しているし、放ってはおけず姉妹はこのアンドレアという男性の面倒をみることに決め、そして妹(ジュディ・デンチ)は孫ほど年の離れた彼に恋をする、というおはなし。
もちろん(そう、もちろん)彼女の恋がかなう訳もなく、彼女の気持ちはアンドレアの知るところともならず、このアンドレアはヴァイオリンの才能を見いだされてロンドンに行き、音楽家として成功をおさめるデビューの舞台を最後に、一度は交差した姉妹と彼の道は離れてゆく訳です。
恋に年齢は関係ないとはいえ、孫ほど年が離れている男性からは対象として見られることすらなく、それは恋に落ちた妹自身がいちばんよくわかっていて、それでもそこでやめることができるのなら、それは恋とは呼べない。
そしてこの妹は年齢こそ重ねているけれど、中身は外見ほどには大人じゃなくて、そもそも自分の気持ちをコントロールしようともしないけど、実際にコントロールもできない。
そういう女性のかわいらしさ、みにくさ、かなしさ、もどかしさ。
ジュディ・デンチ、上手いー、上手すぎるー!
ジュディ・デンチって「眺めのいい部屋」では自立した小説家だったし、「シッピング・ニュース」でも暗い過去のある、けど強い女性だったし、「恋に落ちたシェイクスピア」ではビクトリア女王だし、なんか強い人ばっかだな、と思っていたけど、やっぱ上手いんだなー。こんなに「ちいさな女の子みたいな老婦人」の役が「地」みたいに見えるんだもんなあ。
マギー・スミスは妹よりはずっと現実的な姉の役なので、若くてチャーミングな男性が変化に乏しい姉妹の生活にあらわれたことで、気持ちは高揚するというのはもちろんあるんだけど、自分を見失うほどではない。
むしろ妹のドラスティックな変化を心配し、見守る姉という役どころです。
(「いつか晴れた日に」のエマ・トンプソンケイト・ウィンスレットもそんな感じの姉妹だったな)
これ、原作は姉妹の年齢設定は40代なんだそうです。映画化するにあたって30歳くらい設定を引き上げたみたい。
うん、確かに40代の姉妹だったらこの映画のコピーにあるように「フェアリーテイル」にはならなかったかもね。
平日の朝最初の回だったけど、ほぼ満席でした。観客の年齢層も高かったです。

*1:海辺の街なんだけど、暖流が流れているので冬でも暖かい場所。そのため昔から避寒地として有名