秒速5センチメートル

先週の金曜日、朝出かける支度をしながら情報番組をなんとなく見ていて、思わず手を止めて見入ってしまったアニメーションの新作映画紹介。アニメーションなんだけど背景が写真?と思うくらい写実的で、その景色の切り取り方と色づかいのリリカルさが温度や湿度や風の流れさえも感じるようなリアルな画面なんだけど、確実に誰かの目を通して見た、実写とはまったく違う「リアルな風景」。単に写真のようなだけなら「へえ、きれいだな」と思っただけだったと思うけど、確かに現実の中に存在していた「風景」をこのフィルムを作った人の視点で切り取って、消化して、再構成して、描かれた風景だったということ、そしてそれは単なる「実写のような風景」ではなく気持ちや思いごと切り取った風景だから実写以上に雄弁で、だからあんなに目が離せなかったんだと、あとで思った。「背景が登場人物の動きや台詞以上に気持ちや感情を語っているなんて・・・すごい・・・こんなアニメーションがあるのかあ・・・」としばらくぼんやりしてしまったくらいはじめて見たアニメーションだった。
そのテレビで紹介されていたショートフィルム「言の葉の庭」を作った新海誠さんの「秒速5センチメートル」を見た。
秒速5センチメートル」というタイトルは桜の花びらが地面に落ちるスピードのこと。1話目に桜が象徴的に出てきて、交わされる会話で桜の花びらは秒速5センチで舞い落ちていくのだと説明される。(知らなかった)
1時間ちょっとのショートフィルムは、主人公の中学、高校、社会人と順を追って3つの短編で構成されていて、いろんな「速度」が描かれていた。主人公の成長するスピードもそうだし、日常の速度と自分の気持ちの速度のかみ合わなさ、自分の気持ちと好きな女の子の気持ちのスピードもどんなにお互いを好きでも違うし、東京と地方の時間の流れも速度が違う。(短編の第2話は舞台が種子島なので)もし人間に同じ速度で生きるということが可能なら、どんなに時間を経ても好きな人とも別れなくてすむのかもしれないけど、そんなことは絶対にない。せつない話だったなあ。ラスト5分泣いちゃったー。もちろん言葉以上に雄弁な風景はこの映画も同じでした。
言の葉の庭」は今週末公開*1なのでとても楽しみです。

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

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劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

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*1:DVDは映画公開時、映画館で販売。一般発売は6月。